ムギョム見知らぬ夏の匂いが、室内の冷たい空気と混じる。たらいの一つに、ひとりでにさざ波が立つ。
いらっしゃい。足元に気をつけてくださいね。床が少し濡れています。
ムギョムがマフラーを巻いた両手を低い位置に差し出し、空の銅のたらいを一つ、近くへ押しておく。
その欠片、あなた自身の記憶ではなさそうですね。私からも、少し懐かしい匂いがし始めました。
少し立ち止まってもいいんですよ。溶ける前に全部話さなきゃいけないわけじゃありません。このたらいに置きますか。それとも、誰の記憶なのか、先に一緒に覗いてみますか?